【趣味の話題】ギターを買った

アコースティックギターを買った。

当時ワイは高校三年生やった。
買った理由はありきたりなもので、ギター弾ける奴はカッコイイと思ったからや。お先真っ暗な受験のストレスから何とか逃避したかったっていうのもある。

ワイは受験勉強そっちのけで一日に何時間もギターを弾いた。こんなに何かに夢中になったのは小学生のポケモン以来やった。

陰キャで友達も居なかったこともあって、ワイはますますギターにのめり込んでいった。

プロになったんやろ

デビューシングルのステマかな？

当然受験は惨敗。ワイが勉強せずにギター弾いてたことを知ってたから、親は呆れて何も言わんかった。

第一志望の大学に落ちた日も、Fラン大学に滑り込んだ日も、ワイはギターを弾いた。

そしてある時ワイは思った。

｢ワイのギターを、誰かに披露したい｣

その欲望は、静かながらフツフツとワイの心の中で勢いを増していった。

ワイも今全く同じや

誰かに曲を披露したいわ

大学にはサークルがある。そこに行けば、自ずと演奏を披露する機会もできるやろうと思った。

けど、ワイが行った大学にある音楽系のサークルは軽音と吹奏楽だけだったんや。

吹奏楽は興味無いし、軽音は髪染めてるチャラ男ばっかりで怖くて入れず、結局ワイは何のサークルにも属さず手持ち無沙汰にぼっち大学生活を送ることになった。

他人には誰にも演奏を見せたことがなかったが、親戚には何度か発表の機会があった。

ワイは緊張しながらいつもスピッツの楓を弾き語った。おばあちゃんはいつも｢ワイは上手だねえ｣って褒めてくれて、お小遣いもくれたやで。

変わらなかったのはワイがぼっちなこと、ギターを弾き続けてること。

あと、ワイが持ってるギターは4年前に買ったアコギ1本だけで、新しく買ったりはしてなかった。

変わったのは、優しかったおばあちゃんが去年突然死んだこと。それとアルバイトを始めたことや。

スーパーのアルバイトやった。
そこでは1人のチャラ男を中心とした人間関係の輪が完成しとって、当然コミュ障のワイはその輪には入れず孤独に過ごした。けどレジは個人戦やから、そこまで苦痛ではなかったやで。

その子の名前はミナミさんとしておく。

まあワイみたいなクソザコナメクジメンタルに押せる勇気などあるわけもなく、ただ日々は流れていくかに思えた。

でも、ある時アルバイトで集まって飲み会をしようという企画が立ち上がった。
そしてなぜかワイにも誘いが来た。ミナミさんが誘ってくれたんや。

馴染めるわけもないし当然断るつもりやったが、ふと閃いた。

｢ここで弾き語りを披露すれば、ワンチャン人気者になれるンゴ……？｣

ミナミさんにだって、見直されて、仲良くなるきっかけが掴めるかもしれない。
我に返ったとき、ワイはアコギを背に担いで飲み会会場の前に立っていた。

あかん…

あかん

ノリのいい連中のことだから、

｢おっ、ワイギター持ってきたの？なんか弾いてみてよ～｣

くらいのパスは飛ばしてくれるやろう。そう思っていたし、それは間違っていなかった。
しかしひとつ、誤算があった。

アルバイトの輪の中心、チャラ男もギターを持ってきていた。

チャラ男のギターはうまかった。

｢ギター歴1年だからあんまり期待されると困るんだけど～ww｣

とか前置きしてたけど、うまかった。歌もうまかったし、間奏の部分ではソロギターっぽい弾き方もしてた。弾いてたのはワイの知らない曲だったけど、チャラ男はすごくかっこよかった。

ちらっとミナミさんを見たら、ミナミさんもうっとり聞き惚れてる様子だった。

曲が終わってチャラ男は一同の拍手喝采を浴びた。
ワイも喉奥でひゅるひゅる喘いで虫の息になりながら、チャラ男に拍手を送った。

ワイはチャラ男の演奏を聞いて、気づいてはいけないことに気づいてしまった。

ワイはギターが、下手やった。

チャラ男｢次はワイが弾きま～すwww｣

ワイ｢んぁ、ぇ、ちょ｣

みんな｢うぇ、うぇーーーいww｣

チャラ男｢何弾くの？｣

ワイ｢す、ｽﾋﾟｯ、ﾂ…ｶｴﾃﾞ…｣

チャラ男｢おおっ！！www名曲じゃん！！wwwwじゃ、ワイでスピッツの楓でーーす！！wwww｣

みんな｢お、おおー！！www｣ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

ワイ｢｣

ワイ｢…｣

ワイ｢……｣ｼﾞｬｶｺｼﾞｬｶｺ…

ワイ｢ﾜｧ、すぅ、れはああああ｣

～演奏後～

ワイ｢……｣ｼﾞｮﾛｼﾞｮﾛ

チャラ男｢おっワイ｣

ワイ｢……ああ｣

チャラ男｢ワイってさ、弾き語りとかいつからやってんの？｣

ワイ｢……4年前から｣

チャラ男｢よね…そっか。いや、なんでもない…｣

ワイ｢……｣

チャラ男｢なあワイ、そう気にすることは…｣

ワイ｢チャラ男、これ｣ﾋﾟﾗﾘ

チャラ男｢え、なんだよこの1万円｣

ワイ｢釣りはいらんわ、じゃあな｣

チャラ男｢ちょ、ちょっと、おいワイ！｣

ワイはその日、家で泣きながらギターを弾いた。

それ以来、スピッツの楓は弾いていない。

・日曜日よりの使者
・train train
・キスして欲しい

ワイのレパートリーやとここら辺が受け良いわ

わいも一時期上手さだけにのめりこんだけど上には上がいるから結局ギターを楽しめんくなってたわ

今は好きな曲だけ弾きたいときに弾いて楽しんでるで
結局楽しめたもん勝ちよ